セルラー(携帯回線)とWi-Fiの違い

IoTは頭文字にInternetと付くぐらいネットワークが大事です。そしてインターネットへ無線接続する方法としては主に二つ考えられます。一つはモバイルネットワーク(セルラー回線)、もう一つはWi-Fiです。

この二つのネットワーク回線の相違点について解説します。

最終的にはインターネットへ接続する

セルラー回線、Wi-Fiであっても最終的にインターネットへ接続するのは変わりません。これはどちらにも共通して言えることです。利用できるサービスについても大差はありません。

速度面の違い

インターネットへの接続速度はWi-Fiの方が高速でしょう。多くの場合、Wi-Fiルーターは光回線などのネットワークに繋がっていますのでWi-Fi経由であっても高速です。セルラー回線の場合は現状では高速でも4Gレベルであり、利用量が増えると帯域制限も行われます。

ただしIoTにおいてはネットワーク速度はあまり重視されません。多くはセンサーデータの送信であったり、逆に管理画面からデバイスへのメッセージ送信になるため、128kbpsや、それ以下の回線であっても特に問題にはならないでしょう。

通信コスト

IoTデバイスにSIMを差し込んで使う場合、個々のデバイスごとにSIM料金が発生します。かつては月額数千円することも多かったですが、IoT用のSIMであれば速度が遅い反面、月額数百円から利用できるようになっています。とは言え、デバイスの数が増えれば運用コストもリニアに伸びてしまいます。

Wi-Fiを使った場合、インターネット回線のコストは光ファイバなどに集約されます。そのため、利用台数が増えれば一デバイスあたりのコストは下がっていくことになります。

最近ではセルラー回線を使った場合でもスター型配置にし、一台がルーターの役割をしつつ、他のデバイスとは無線LANやBluetoothなどで通信を行うケースも増えています。これはデバイス同士が近くにある場合に使えますが、一つ一つのデバイスが数キロ離れて点在している場合には使えません。

距離

Wi-Fiは規格上屋内でも100m以上飛ぶとされていますが、障害物が多い環境では不可能です。恐らくみなさんも経験上、一階上がっただけで無線LANがつながらないといった経験があるのではないでしょうか。もちろん業務用ルータなどは性能が高いですが、それでも障害物のない空間で100m程度です。高性能ルーターを採用することで配置できるデバイスの数は多くできますが、Wi-Fiの電波を安定稼働させるのは苦労する(機器が増えると電波干渉などを起こします。)はずです。

対してセルラー回線の場合、アンテナさえ立っていれば問題なく利用できるでしょう。日本においては殆どの地域で4Gが使えて、発展途上国においても3G回線は利用できます。十分に広範囲で利用できるはずです。

消費電力

一般的にWi-Fiの方が消費電力は小さいとされています。また、不安定な3G回線などでは電波を探し続けるので消費電力が大きくなるようです。逆に安定して接続できる状態が維持されるならばセルラー回線であっても消費電力が小さくなります。

セキュリティ

Wi-Fiの場合、多くはインターネットへはダイレクトに繋がらずにルーターが仲介します。そのため、インターネットからIoTデバイスへ直接繋ぐことはできませんので、ハッキングやクラッキングを試みる場合はMITM(Man In The Middle)などの高度な手法が必要になります。その意味ではよりセキュアと言えます。

セルラー回線を直接備えたIoTデバイスの場合、グローバルIPアドレスを持っているケースもあります。そうしたデバイスでは外部からの攻撃に対する防衛をデバイス単位で行わなければなりません。

小さなIoTデバイスであっても最近では十分な計算能力を備えるようになっています。乗っ取られたりすると、犯罪に利用されたり、踏み台サーバにされる可能性もあります。十分注意が必要です。

アーキテクチャ

WiFiの場合、必ずWi-Fiのアクセスポイントやルータが必要になります。それらは安定して動作し続ける必要があり、固定の電源が必要になるでしょう。そのため、郊外や自然の中で利用するのには向きません。全体のシステム構成も複雑になりがちですが、工場や博物館などの施設内でIoTプロジェクトを展開するのであれば大きな問題にはならないでしょう。

セルラー回線の場合、直接インターネットにつながる構成になるのでシンプルになりやすいでしょう。それだけボトルネックになる部分も分かりやすく障害点も少なくて済みます。屋外であったり、安定した電源が確保できない環境であっても利用できるのが強みです。

まとめ

Wi-Fiはネットワークや電源が安定した場所で用いると大きなメリットがあります。例えば工場、会社、学校、公共施設や公共交通機関などです。多くは高速なインターネット回線も備えており、メンテナンスするのもそう難しくありません。対してセルラー回線の場合、レンタル自転車で使われていたり、自販機などでも利用例があります。近くに安定したネットワークが期待できない、バッテリー駆動、移動が伴うものなどの場合はセルラー回線の方が運用しやすくなるでしょう。どちらにも一長一短があり、そのIoTプロジェクトで実現したいことに応じて最適な選択をすべきでしょう。

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